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交通事故

第16回交通事故コラム 自賠責保険とは何か|補償範囲と限度額をわかりやすく解説

交通事故に遭った直後、病院での治療が続く中で「保険はどこまで補償してくれるのか」「相手の保険から本当にきちんとお金は出るのか」と不安になる方は多いです。特に、保険会社から突然「自賠責の限度額に達しました」と言われ、それ以上の治療費の支払いを打ち切られるような状況になったとき、被害者の方は大きな戸惑いを感じられることでしょう。

交通事故の賠償において必ず登場する「自賠責保険」は、被害者にとって最初の補償の入口となる重要な保険です。しかし、その仕組みや限度額、補償の範囲について正確に理解されている方は多くありません。保険の知識がなければ、保険会社の説明をそのまま受け入れてしまい、本来受け取れるはずの賠償額を大きく下回る金額で示談してしまうケースも少なくありません。

なお、自賠責保険における入通院慰謝料の計算基準(日額)は、令和2年(2020年)4月1日以降に発生した交通事故から改定されています。また、電動キックボードへの加入義務化など、近年は自賠責保険をめぐる制度が変化している点にも注意が必要です。

今回のコラムでは、自賠責保険とは何か、その補償範囲・限度額・慰謝料の計算方法、そして限度額を超えた場合の対応まで、交通事故被害者の方が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

自賠責保険とは何か|強制加入の理由と目的

自賠責保険の法的根拠と「強制保険」である理由

自賠責保険の正式名称は「自動車損害賠償責任保険」といいます。自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に基づき、すべての自動車・バイク・電動キックボードに加入が義務付けられた強制保険です。

同法第1条は「自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図ること」を目的として定めています。そして第5条では、自賠責保険の契約が締結されていない自動車は公道で運行してはならないと明記されています。

もし自賠責保険に未加入のまま車を運行した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、違反点数6点(免許停止)という重い処分が科せられます。また、自賠責保険証明書を車に備え付けていないだけでも30万円以下の罰金となる可能性があります。これだけの義務が課されている背景には、「加害者側に資力がなくても、被害者が最低限の補償を受けられるようにする」という強い政策的意図があります。

自賠責保険が「最低限の補償」である理由

自賠責保険は、あくまでも被害者に対する最低限の救済を目的とした保険です。保険金は、国土交通大臣および内閣総理大臣が定めた「支払基準」に基づいて支払われるため、加入している保険会社が異なっても補償内容は変わりません。迅速かつ公平な処理が求められるため、多くの部分が定型・定額化されています。

そのため、自賠責保険だけで被害者に生じたすべての損害が補填されるわけではありません。限度額を超えた部分については、加害者が加入する任意保険や、加害者本人への請求によって回収していく必要があります。この点が、被害者にとって最も重要な理解ポイントの一つです。

自賠責保険の補償範囲|何が対象で何が対象外か

補償されるのは「人身損害」のみ

自賠責保険の補償範囲は、対人賠償(人身損害)に限られています。具体的には以下の3種類の損害が対象です。

  • 傷害による損害:治療費・入通院慰謝料・休業損害など(限度額120万円)
  • 後遺障害による損害:後遺障害慰謝料・逸失利益など(等級に応じて限度額75万円〜4,000万円)
  • 死亡による損害:葬儀費・逸失利益・遺族・被害者本人の慰謝料(限度額3,000万円)

一方、以下のものは自賠責保険の対象外です。被害者の方が誤解されやすいポイントですので、しっかり確認してください。

  • 車やバイクなどの物的損害(物損):車の修理代、携行品の損傷など
  • 事故を起こした加害者本人のケガ
  • 自損事故(100%被害者の過失で発生した事故)
  • ガードレール・電柱などの建造物の損傷

北海道・札幌では冬の雪道・凍結路面での事故が多く発生します。スリップ事故で相手車両のみに衝突してしまった場合、車の修理代は自賠責保険では補償されません。また、スリップによる単独の自損事故(電柱への衝突など)も自賠責保険の対象外となる点に注意が必要です。

過失割合と自賠責保険の関係

通常の損害賠償では、被害者側にも過失がある場合、その割合に応じて賠償額が減額されます(「過失相殺」といいます)。しかし、自賠責保険は被害者保護の観点から、被害者に重大な過失がない限り、損害賠償額は減額されません。被害者の過失が70%以上の重大過失がある場合にのみ、一定の減額が行われる仕組みになっています。これは、軽い過失がある被害者でも一定の補償を確保できるという点で、被害者に有利な制度設計となっています。

自賠責保険の限度額と慰謝料の計算方法

傷害・後遺障害・死亡別の限度額一覧

自賠責保険の支払限度額は、被害者1名あたり、以下のとおり定められています(自動車損害賠償保障法施行令第2条)。

  • 傷害による損害:最高 120万円(治療費・慰謝料・休業損害の合計)
  • 後遺障害による損害:等級に応じて最高 75万円〜3,000万円(常時介護が必要な場合は最高 4,000万円
  • 死亡による損害:最高 3,000万円(死亡に至るまでの傷害分は別途最高120万円)

重要なのは、これらの限度額は「被害者1名あたり」の金額であり、1事故あたりの上限ではないという点です。また、保険期間中に何回事故を起こしても、限度額は減額されません。加害車両が複数ある場合は、それぞれの車について被害者1名あたり上記の限度額が適用されます。

入通院慰謝料の計算方法(令和2年改定後)

自賠責保険基準の入通院慰謝料は、令和2年(2020年)4月1日以降に発生した事故から日額4,300円に改定されています(それ以前の事故は日額4,200円)。計算式は以下のとおりです。

【計算式】
①「治療期間(事故日〜完治日または症状固定日)の総日数」× 4,300円
②「実際に入通院した日数」× 2 × 4,300円
→ ①と②のうち、金額が低い方が慰謝料となります。

【計算例】
治療期間3ヶ月(90日)、実通院日数40日の場合:
① 90日 × 4,300円 = 387,000円
② 40日 × 2 × 4,300円 = 344,000円
→ 低い方の 344,000円 が慰謝料となります。

このように、実際に通院した日数が少ない場合には慰謝料も低く算定されます。通院を怠ると慰謝料が大幅に減額される可能性がありますので、医師の指示に従って定期的に通院することが重要です。

自賠責保険の請求方法|「被害者請求」と「加害者請求」の違い

加害者請求とは

加害者請求とは、加害者が被害者に損害賠償金を支払った後、自賠責保険会社に保険金を請求する方法です(自動車損害賠償保障法第15条)。加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が自賠責保険の負担分も含めてまとめて被害者に支払い、後から自賠責保険にその分を請求するのが一般的な流れです。

被害者にとっては手続きの手間がかからないメリットがありますが、手続きを加害者側に任せることになるため、被害者に有利な証拠の収集・提出が期待できないケースがあります。また、原則として示談が成立した後でなければ保険金が受け取れないという点にも注意が必要です。

被害者請求とは|直接請求できる重要な権利

被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の加入している自賠責保険会社に対して、直接、損害賠償額を請求できる方法です(自動車損害賠償保障法第16条)。

被害者請求の主なメリットは以下のとおりです。

  • 示談成立前でも、必要なタイミングで請求ができる
  • 被害者自身が有利な証拠・医療記録を集めて提出できる
  • 加害者が任意保険未加入でも補償を受けられる
  • 後遺障害等級認定を自分で申請できるため、等級認定の透明性が高まる

一方で、被害者自身が診断書・治療費の領収書・交通事故証明書など多くの書類を集める必要があるため、手続きが煩雑になる点はデメリットといえます。後遺障害が残る可能性がある場合や、加害者側の対応に不安がある場合は、被害者請求を積極的に検討することをお勧めします。

自賠責保険の限度額を超えた場合はどうなるか|注意すべきケース

任意保険・弁護士基準との差額を取り戻すことが重要

自賠責保険の限度額(傷害分120万円など)を超えた部分については、加害者が加入している任意保険に請求することになります。しかし、ここで注意が必要です。

慰謝料の算定基準には、①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準(裁判基準)の3種類があります。自賠責基準が最も低額で、弁護士基準(裁判基準)と比較すると、後遺障害慰謝料では2〜3倍程度の差が生じることもあります。保険会社は任意保険基準や自賠責基準をもとに示談金を提示してくることが多いため、被害者が何も知らずに示談してしまうと、本来受け取れる適正額を大幅に下回る金額で解決してしまう可能性があります。

また、任意保険会社は自賠責保険の限度額を前提に説明してくることがあります。たとえば、治療費がかさんで傷害分の120万円に近づいてくると、任意保険会社が「治療費の支払い打ち切り」を打診してくるケースが実務上みられます。しかし、症状が残っているにもかかわらず治療を打ち切ることは被害者にとって不利益となる場合があり、安易に応じる必要はありません。

通勤・業務中の事故は労災保険との併用も検討を

通勤中や業務中に交通事故に遭った場合、労災保険を利用できる可能性があります。労災保険は会社・事業主が負担する保険であり、自賠責保険とは異なり損害額に対する上限がありません。示談交渉なしに利用でき、迅速に治療費や休業給付を受けられるメリットがあります。自賠責保険・任意保険・労災保険を適切に組み合わせることで、被害者が受けられる補償を最大化できる可能性があります。ただし、同一の損害項目について二重取りはできないため、どのように活用するかは専門家に確認することをお勧めします。

おわりに

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づき全車両に加入が義務付けられた強制保険であり、交通事故被害者に対する最低限の補償を目的としています。補償されるのは人身損害のみ(物損は対象外)であり、限度額は傷害分120万円、後遺障害分75万円〜4,000万円、死亡分3,000万円です。入通院慰謝料は令和2年4月1日以降の事故から日額4,300円で計算されます。

自賠責保険はあくまでも「最低限の補償」であり、保険会社が提示する金額が適正かどうかを被害者自身が判断するのは非常に難しいのが現状です。特に後遺障害が残るケースや治療が長引く場合には、弁護士基準(裁判基準)との差額が大きくなるため、早めに専門家へ相談することが重要です。

当事務所では、交通事故被害に遭われた方のご相談を随時受け付けております。初回相談は無料ですので、一人で悩まずにまずはお気軽にご連絡ください。保険会社との交渉や後遺障害認定のサポートなど、経験豊富な弁護士があなたの状況に合わせた解決策をご提案いたします。

 

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