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交通事故

第15回交通事故コラム 北海道・雪道での交通事故|過失割合と対応の注意点

北海道の冬道は、全国でも特に過酷な運転環境のひとつです。凍結路面(アイスバーン)、圧雪、ブラックアイスバーン、吹雪による視界不良…。毎年冬になると、スリップや追突など、通常では起こりにくい交通事故が道内各地で多発します。日本損害保険協会北海道支部の統計によれば、2017年度から2021年度の冬期(11月〜3月)における北海道内の死亡事故のうち、スリップ事故が占める割合は約18.9%にのぼり、負傷事故でも全体の16.4%をスリップ事故が占めています。いつも通りの道なのに、突然後ろから追突された、スリップしてきた車に衝突された――そのような状況に直面し、途方に暮れている方も少なくないでしょう。

そんなとき、多くの被害者の方が抱える不安のひとつが「過失割合(かしつわりあい)」の問題です。「雪道だったのに、なぜ私にも過失があるといわれるのか」「相手の保険会社から提示された割合は正しいのか」「冬道という特殊な状況は過失割合にどう影響するのか」。こうした疑問は、交通事故の被害者であれば当然のことです。

また、北海道ならではの雪道事故には、通常の交通事故とは異なる証拠収集上の難しさもあります。雪が積もることでブレーキ痕が消えたり、道路標識が埋もれたりすることで、事故状況の立証が困難になるケースが少なくありません。こうした問題を放置したまま示談に応じてしまうと、不当に高い過失割合を押し付けられ、受け取れる賠償金が大幅に減額されてしまうおそれがあります。

今回のコラムでは、北海道・雪道での交通事故における過失割合の考え方、冬道特有の修正要素、そして事故後の対応と保険会社との交渉における注意点について、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

雪道の交通事故における「過失割合」とは何か

過失割合の基本的な意味

交通事故が発生した場合、「過失割合」とは、事故の原因について当事者それぞれにどの程度の過失(不注意・義務違反)があるかを割合で表したものです。たとえば「加害者80:被害者20」という過失割合であれば、被害者側に20%の過失があると評価されます。

この過失割合は、受け取れる損害賠償金の額に直接影響します。たとえば損害総額が100万円の場合、被害者に20%の過失があれば受け取れるのは80万円となり、20万円が差し引かれます(これを「過失相殺」といいます)。つまり、過失割合が1割変わるだけで、賠償金額に大きな差が生じるのです。

過失割合の基準は、実務上「別冊判例タイムズ38(東京地裁民事交通訴訟研究会編)」という書籍に基づいて算定されることが一般的です。保険会社もこの基準を参考にして過失割合を提示してきます。ただし、個別の事故状況によって修正が加えられることがあります。

雪道だからといって基本的な過失割合は変わらない

北海道で冬道の事故に遭うと、「雪道なんだから仕方ない」「スリップは不可抗力だ」という考えを持つ方もいますが、法律上は「雪道だから」という理由だけで過失割合が自動的に変わるわけではありません。

たとえば追突事故の場合、道路交通法第26条は「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるために必要な距離を保たなければならない」と規定しています。この規定は雪道であっても変わりません。雪や氷でスリップしたこと自体は過失割合に直接影響せず、あくまでも「車間距離を適切に保っていたか」「速度は適切だったか」などの運転行動が評価されます。

実務上も、雪道でスリップして追突事故が起きた場合の基本の過失割合は「追突した車:追突された車=100:0」が原則とされています。

北海道・雪道特有の「過失割合の修正要素」とは

ノーマルタイヤでの走行が問題になるケース

北海道では、冬期間にノーマルタイヤで走行することは、単に危険なだけでなく法令違反となる可能性があります。道路交通法第71条第6号に基づき、各都道府県の公安委員会が積雪・凍結時の滑り止め措置を義務付けており、北海道でも同様です。沖縄県を除くすべての都道府県でこの規制が存在します。

もし相手方がノーマルタイヤで走行していた場合、相手側の過失割合が加算される可能性があります。これは「スリップすることを予見できたにもかかわらず、適切な対策を怠った」という評価につながるためです。逆に、被害者側がノーマルタイヤだった場合、被害者の過失割合が増加する方向に修正されることもあります。実際の裁判例でも、積雪路でノーマルタイヤを装着していた後続車に「著しい過失あり」として過失割合の修正が認められた事例が存在します。

北海道内では11月末〜12月にかけてスタッドレスタイヤへの履き替えが一般的ですが、観光客や道外からの来訪者がノーマルタイヤのまま走行して事故を引き起こすケースも見られます。このような場合、相手方の過失割合を適切に主張するための重要な材料となります。

積雪による道路状況の変化が過失割合に影響するケース

北海道の雪道事故でもうひとつ重要なのが、積雪によって道路の状況自体が変化しているという点です。以下のようなケースでは、通常の事故とは異なる判断が必要になります。

  • 路幅が変わる問題:路幅は過失割合を決める重要な基準のひとつです。積雪によって雪が道路脇に積み上がると、本来は幅の差がある道路でも、事故時には同程度の幅になっていることがあります。この場合、地図上の路幅ではなく、事故当時の実際の路幅をもとに過失割合が判断されます。グーグルストリートビューなどの地図は雪のない状態を映しているため、雪道事故では現場写真が非常に重要な証拠となります。
  • 道路標識・標示が見えなくなる問題:雪に埋もれた道路標識や標示は、「歩行者や運転者が客観的に認知できない」と評価される場合があり、その標識・標示に基づく過失の主張ができなくなる可能性があります。たとえば「一時停止」の標識が雪で完全に隠れていた場合、一時停止義務がなかったものとして過失割合が算定されることがあります。これは被害者にとって有利にも不利にもなりうる要素です。
  • 速度超過の問題:雪道においては、通常より低い速度で走行すべき注意義務があります。制限速度内であっても、路面状況に対して不相当な速度で走行していた場合は過失割合が加算されることがあります。実務上は、時速15km以上の速度超過で5〜15%程度、時速30km以上の速度超過で10〜20%程度、過失割合が上がるとされています。
  • 急ブレーキの問題:道路交通法第24条は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き急ブレーキを踏んではならないと定めています。雪道で不必要な急ブレーキをかけてスリップを引き起こした場合、そのドライバーに一定の過失が認められる可能性があります。

雪道事故後の対応と証拠収集の注意点

事故直後にやるべきこと

北海道の雪道での事故は、通常の事故以上に事故直後の初動対応が後の交渉を左右します。ケガをしている場合は何より先に救急への通報と安全確保を最優先にしてください。その上で、以下の点に注意しましょう。

  • 警察への通報(必須):道路交通法第72条に基づき、事故が発生したら直ちに警察に通報しなければなりません。警察による実況見分調書(じっきょうけんぶんちょうしょ)は、後の示談交渉や裁判でも重要な証拠となります。
  • 現場写真の撮影(雪道では特に重要):雪は時間の経過とともに積もり続け、路面状況がどんどん変化します。ブレーキ痕、雪の積もり具合、道路標識の状態、路幅の状況を、事故直後にできる限り多くの角度から写真に収めてください。雪が降り続けるとブレーキ痕はすぐに消えてしまいます。雪道での事故後は特に、証拠が消える前のスピード対応が求められます。
  • ドライブレコーダーの映像を確保:ドライブレコーダーのSDカードは事故後できるだけ早く抜いて保管してください。多くの機種はデータが上書き式のため、放置すると映像が消えてしまいます。雪道ではブレーキ痕などの物的証拠が残りにくいため、ドライブレコーダーの映像が事故状況を証明する唯一の客観的証拠となることも少なくありません。
  • 相手方の情報確認:相手のタイヤの種類(スタッドレスかノーマルか)を確認しましょう。ノーマルタイヤであった場合は写真に記録しておくことが重要です。
  • 目撃者の確保:周囲に目撃者がいれば連絡先を聞いておきましょう。また、近くに防犯カメラや監視カメラがないか確認し、警察に証拠保全を要請することも考えられます。

病院受診と「症状固定」前の示談は危険

雪道事故ではむちうちや骨折など、見た目ではわかりにくいケガを負うことがあります。事故後すぐに症状が出なくても、翌日以降に痛みが出てくることもよくあります。事故後は必ず医療機関を受診し、症状を医師に記録してもらうことが重要です。

また、治療が完了(症状固定)する前に保険会社から示談を迫られても、安易に応じてはいけません。一度示談が成立すると、後から「やはり後遺症が残った」と訴えることは原則として認められません。特に交通事故によるケガは、完治までに時間がかかるケースも多く、症状固定と後遺障害の認定を経た後に示談するのが基本です。

保険会社との交渉における注意点

保険会社が提示する過失割合は「交渉の出発点」にすぎない

事故後、相手方の保険会社から過失割合が提示されます。しかし、保険会社が最初に提示する過失割合が、必ずしも法律上正しいものとは限りません。保険会社は自社の支払い額を最小化する観点から交渉してくる傾向があります。

特に雪道事故では、次のような形で不当に高い過失割合を押し付けられるリスクがあります。

  • 「雪道だったので双方にある程度の過失がある」という曖昧な理由で、根拠なく被害者の過失を大きく見積もってくる
  • 事故当時の路面状況(標識の見えなかった状況・路幅の変化など)が考慮されていない
  • 相手方のノーマルタイヤや速度超過といった修正要素が反映されていない
  • ブレーキ痕などの証拠が残っていないことを理由に、被害者に不利な認定がされる

過失割合に納得できない場合は、「承諾します」「同意します」とは絶対に言わず、まず弁護士に相談することをお勧めします。一度合意してしまうと、後から覆すことは非常に困難です。

弁護士費用特約の活用を検討しましょう

ご自身やご家族が加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、弁護士への相談・依頼にかかる費用(通常、着手金・報酬など)の多くを保険でカバーすることができます。多くの場合、保険会社への支払いを気にせずに弁護士を活用できる仕組みです。まずはご自身の保険証券や保険会社に確認してみてください。

弁護士が介入することで、過失割合の適正化はもちろん、慰謝料の増額(任意保険基準より裁判基準の方が高い場合が多い)、休業損害・逸失利益の正確な算定、後遺障害認定のサポートなど、さまざまな面で被害者の権利を守ることができます。

また、札幌地方裁判所では平成28年6月24日に雪道での自転車事故(ブラックアイスバーン上での転倒と後続車による轢過)について判断が示されるなど、北海道内でも雪道事故に関する裁判例が積み重ねられています。このような裁判例や法的基準を踏まえた主張は、弁護士でなければ困難です。保険会社の担当者はあくまでも保険会社側の立場であり、被害者の利益を最大化するために動いてくれるわけではありません。

おわりに

北海道・雪道での交通事故における過失割合と対応について、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 「雪道だから」という理由だけで過失割合が変わるわけではなく、具体的な運転行動(車間距離・速度・タイヤの種類・急ブレーキの有無など)が評価される
  • ノーマルタイヤでの走行、速度超過、不必要な急ブレーキなどは過失割合の修正要素となりうる
  • 積雪による路幅の変化・道路標識の不可視化など、北海道特有の事情が過失割合の判断に影響する場合がある
  • 事故直後の現場写真・ドライブレコーダー映像の確保が、雪道事故では特に重要な証拠保全となる
  • 保険会社が最初に提示する過失割合は必ずしも正しくなく、示談前に弁護士への相談を強くお勧めする

当事務所では、交通事故被害に遭われた方のご相談を随時受け付けております。初回相談は無料ですので、一人で悩まずにまずはお気軽にご連絡ください。保険会社との交渉や後遺障害認定のサポートなど、経験豊富な弁護士があなたの状況に合わせた解決策をご提案いたします。

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